子育ては毎日、試行錯誤の連続。幼い頃は心配が尽きず、思春期を迎えれば子どもの変化に大わらわです。
そこで今回は脳科学から見た子育て関連情報を栗田先生に教えていただきました。
あいさつをすると、前頭葉で親密信号が発生!!
「小さな親切」運動さんは、あいさつ運動を広められていますが、これは子どもにとってたいへん意義のあることだと思います。それは勉強や人付き合い、いじめ問題や部活動など、これから子どもたちが通り抜けていく過程のすべてに有意義だからです。
実は、人間以外にも「あいさつ」をする動物がいます。例えば猿です。あいさつをしてどうするかというと、相手の顔色をうかがうのです。そしてその反応によって、敵か味方かを判断します。こうした動物には表情というものがあるわけですね。
さらには社会性動物でもあります。個の力だけではなく社会を作ることで種を保存するという能力を身に着けた動物たちなのです。
人間はその代表格です。その社会づくりに大切なことはコミュニケーションであり、その第一歩が「あいさつ」と言えるでしょう。
あなたが誰かにあいさつをして、相手があいさつを返したとしましょう。この時、脳の中で何が起きているかというと、まず側頭葉という脳の横の方が、人の顔、表情、個人名と順に認識します。次に側頭葉の前方及び前頭葉というところで親密さを感じる信号が出ています。
「敵対的な相手ではないから、警戒を解いていいですよ」ということですね。
そして、コミュニケーションが始まります。
「毎日暑いですね」「そうですね。ひと雨来てくれないかしら」
話がかみ合っていますね。そうすると、今度は前頭葉の中で共感する部分がどんどん働き出すのです。共感が増えますと、人間関係はより強くなっていきます。自然と笑顔になってきますので、ますます親密さも増していきます。
スマホを見ている母親は、赤ちゃんには見えてない
人間の脳は、刺激を必要なものと不要なものに分ける才能を持っています。例えば録音した音を再生すると、ものすごくたくさんのノイズが聞こえて驚くことがありませんか。これ、普段は無意識に捨て去っている音の情報なのです。服を着ていても、いちいち肌からくる情報を感じないしょう。これもそうです。あらゆる刺激に反応していたら、処理しきれませんからね。
でも、刺激は脳の成長に大きな影響を与えます。赤ちゃんを抱っこして、なでてあげたり、目を覗き込んだり、歌ってあげたり。そうした刺激を受けることで赤ちゃんの脳が育っていきます。そして、親子のきずなが深まっていきます。母親が赤ちゃんを見ずにスマホを見ていて、手だけがポンポンと体を叩いていてもダメです。母親とその刺激がつながりません。スキンシップは目をみながら、声をかけながら行ってください。
さて、生まれて幼稚園くらいまで、人間は他人と自分の区別がしっかりしていません。だから、人のものでも気にしないで取ってしまったりします。
「それは●●●ちゃんのでしょう」と繰り返し言わないと、理解ができないのです。
人を噛んだりもします。そういう時は、同じ程度の痛みを感じさせた方がよいと思います。
最近は体罰禁止の風潮がありますが。痛みというのは、脳にとっても強烈な刺激です。子どもは転んだり、落ちたりして痛みを感じることで、命にかかわることをしないように訓練できるのです。ですから、痛みという刺激=信号とともに、やってはいけないことなどを教えた方が効果的なのは間違いありません。
誰かを叩いたら、お尻を叩くとか、腕をぴしゃりと打つなどして「ほら、あなただって痛いでしょう」と教える方が効率がよいのです。ですので、私は適度な体罰は必要だと考えています(栗田先生は体罰擁護派だった!?)。
これをしないでおきますと、大きくなってから『他人の痛みが分からない子』になってしまいます。いじめも平気でするようになります。
他人の存在に関心がないということは、教師のいうことにも注意を払いませんから、勉強にも支障が出てきます。そして、人間関係づくりが下手ということは、教室でも部活動でも、さらには社会人になっても、苦労をしてしまう可能性は高いでしょう。ほかに特殊な才能があればよいのですけれどね。
先の話に戻りますが、幼い時にあいさつを教えるということは、人と人とのつながりの基盤を作る大切な脳の教育でありその後の人生にとっても大切なことなのです。
全否定と敬遠。思春期の子を持つ親の二大タブー
最後に思春期です。
この時期は自我が目覚め、自分の判断で生きていく準備段階です。脳も成人の段階に成長していきます。それまでは、親の指示に従っていた子どもが、自分の力で歩みだそうとしています。親と自分の判断が異なることがしばしばありますので、口答えが多くなります。いわゆる反抗期ですね。
よく「あの子はいい子だ」なんていいますが、それって親や大人のいうことを聞く子ということでしょう。ものすごく自分を抑えこんでいるか、大人になるのを拒否している可能性もありますので、かえって要注意だと私は思います。
この時期の注意事項は二つです。まず、子どもの主張の一部が悪いからと言って、頭ごなしに全否定をしないということ。人の判断のすべてが悪いということはまずありません。よく理由を聞けばもっともだということは必ずあります。それは子どももわかっています。それを全否定するということは、相手の話をこれっぽっちも聞いていないことになります。ある意味で大人になるな!と言っているのと同じですから、親に話しても無駄だとなってしまいます。もうひとつは真逆で、すぐに子どもが怒るからと言って腫物にさわるような態度をとることもよくありません。これも、相手の存在を無視するのといっしょです。親は親で自分の価値観や倫理観で判断して、ものを申すべきでしょう。
どちらの場合もよく相手の言い分を聞いて、なぜいけないのかを説明するように努力してください。親が自分の思春期の頃を思い出し、対等の立場で話し合うことも良いかと思います。
ちなみに、この頃に親が小さな子を叱るような態度をとると、金属バットで殴られるかもしれません(ここでは栗田先生は非体罰派・・・)。