親切の科学
「小さな親切」が健康長寿につながる!

先日、NHKの番組「ガッテン」で、「人に親切にすることが、健康長寿に効果的である」という内容が放映されるなど、近年「人に親切にする」と、心身ともに良い影響があるという、様々な研究の実験結果が続々と発表されています。

親切が寝たきりを防ぐ

“長生きの仕組み”を研究しているアメリカ・カリフォルニア大学ロサンゼルス校、スティーブ・コール教授は、健康に問題のない150人を対象に実験を行いました。

  • 対象者を次の3グループに分け、1カ月間、それぞれ次の行動をしてもらい、免疫力を測定。

 

①1日3回、人に親切にする

②道のごみを拾うなど、世の中の役に立つことをする

③好きなものを食べる等、自分が嬉しいことをする

すると、なんと①の13回、人に親切にする」グループだけに、「体の中の炎症を抑える」変化が見られました。

体の中の炎症が長引くと、様々な病気になる恐れがあり、最終的に寝たきりになることも考えられます。

 

■身体の中の炎症とは  

血液中の免疫細胞は、病原菌をやっつけるため自ら炎症を引き起こします。しかし、この炎症が長引くと、筋肉や血管にダメージを与え、その結果、筋力の衰え、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞になる可能性があります。

■なぜ、「人に親切にする」と血液の炎症が抑えられるのか

スティーブ・コール教授によると、「人類は、進化の過程で互いが助け合って生き残ってきた」という歴史が関係していると言います。集団で狩りなどをしていた原始生活では、仲間との協調性を失い、孤独になることはすなわち死を意味していたことから、現在も人とのつながりが重要となっているのです。

 

一番大切なのは“人とのつながり”

また、ある調査では、長生きにプラスに働くのは、“運動”や“禁煙”を抑えて「人とのつながりを持つこと」が1番であることがわかりました。人とのつながりが少なく、孤独な人は、心臓病や認知症、筋力低下をおこし、結果的に「早死のリスクが50%高くなる」のだそうです。

さらに、次のような研究結果もあります。

親切は心臓と血管を強くする

人に親切をしたとき、気分がよくなったり、温かい気持ちになった経験は誰にでもあるでしょう。これは脳内に、プラスの感情にかかわる神経伝達物質「ドーパミン」や「セロトニン」が分泌されるから、とする研究があります。さらに、“絆ホルモン”といわれる「オキシトシン」も作られます。オキシトシンは、授乳中の女性に活発に分泌されるホルモンとしても有名。人間同士や人間と動物の間で愛情・信頼を感じる時にも作られています。

最近では、このオキシトシンが心臓でもつくられていることがわかってきました。オキシトシンは、動脈の内壁にある細胞をやわらかくする作用があります。すると、血管が広がり、血流がよくなるため、血圧が下がり、心臓発作の予防になります。

親切でアンチエイジング

カリフォルニア大学バークレー校の研究では、オキシトシンが足りないと筋肉が再生されず、弱体化し、老化が進むということが明らかになりました。また最近では、これは手足の筋肉だけでなく、心臓を動かす心筋にも当てはまることもわかってきました。

また、肌の老化にも、オキシトシンは関係しています。ある研究では、オキシトシンが少ないと皮膚細胞にフリーラジカル(体の中を酸化させ老化を促進させる物質)が増える、つまり「しわが増える」ということがわかりました。老化は自然現象なので、無くすことはできませんが、親切によってオキシトシンが増えると、フリーラジカルの発生を抑えることができるため、老化のスピードを遅らせることができるのです。

(参考文献:「親切は脳に効く!」デイビット・ハミルトン著/サンマーク出版)


「小さな親切」運動に長年携わっている役員や会員の皆様の中には、80代、90代になっても元気で若々しい方が多く、常々不思議に思っていたのですが、今回のような研究結果を知り、納得しました。「人生100年時代」ともいわれる昨今、健康で心豊かに暮らすために、改めて「小さな親切」運動の大切さを感じました。