「小さな親切」作文コンクール 入賞作品
〈第48回(令和5年度)・入選〉

「どんなときも温かい」

福島県 大玉中学校 2年              矢崎 友里

私の住む「大玉村(おおたまむら)」は、お米がおいしい、自然が豊かなど、いいところがたくさんあります。そんないいところの一つに、人の温かさがあると思います。私がそれを実感できたのは、小学生のときです。

私は、小学5年生から、登校班の班長になりました。私の地区から学校までは、およそ2キロと少し遠く、歩くのが面倒だった私は、母に車で送ってもらうことも多かったのですが、班長になってからは、責任を感じ、苦手な早起きや準備をがんばって、しっかり時間通りに集合場所に行き、しっかり歩いて登校するようになりました。

私が班長になったときに入った1年生はたった一人でしたが、とてもかわいくて、4月の頃は、毎朝登校が楽しみでした。しかし、1年生の男の子はとても元気で、道を歩くといろいろなものが気になり、寄り道しようとしていました。

私は、必死にそれを止めようとしていましたが、なかなか止められず、学校に着くのはいつも時間ぎりぎりでした。私が6年生になり、もう一人新入生が入ってくると、今度は二人でふざけ、私はとてもイライラしていました。

だんだんと登校が嫌いになってきた私に元気をくれたのが、地域の方です。私たちの通学路には、毎朝見守り隊という人々が立っています。毎朝あいさつをして、私たちに声をかけてくださいました。

「いつも下級生の面倒を見ていて、えらいわね。」

そう言われると、とてもうれしくなり、それまでのイライラや疲れが吹き飛ぶようでした。私たちの登校の様子は、家族も先生も見ていないから、私を班長として認め、ほめてくださったことがとてもうれしかったです。

見守り隊の方々の言葉は、私をはげまし、私の心に光を灯すようでした。それから私は、毎朝の登校が辛くはなくなりました。私は、雨の日も風の日も、毎日弟と歩いて登校していましたが、そんな日も、見守り隊のみなさんは、私たちを見守ってくださいました。

歩いているのが、私と弟の二人だけでも、レインコートを着て、笑顔で声をかけてくださりました。その笑顔は、雨の日の暗い雲と私の気持ちをぬぐってくれるほど、まぶしかったです。

小学校の卒業式の1日前、通学路を歩く最後の日、私はお世話になった見守り隊のみなさんに、感謝の気持ちをこめた手紙を渡しました。とても喜んでくださり、逆にお礼を言われてしまいました。こんなに優しい人々に見守られながら成長できて、私は幸せだと思いました。

私は、家族や友達はもちろん、他にもたくさんの人々に支えられています。辛いときも誰かがいつもそばにいます。卒業した後に、ある見守り隊の方からもらった手紙には、私の好きな宮沢賢治の詩が書かれていました。

私も、どんなときも笑顔で温かい人になりたいです。

『雨ニモマケズ、風ニモマケズ……。』

コロナ禍の子どもたちが教えてくれた“大切なこと”

令和3年(2021)度の「小さな親切」作文コンクールは、通常テーマ「小さな親切」に加えて、特別テーマ「コロナが教えてくれたこと」を設けました。 “ウィズコロナ”が日常となった子どもたちの作文には、幸せの本質や人の心の在り方など、大切なメッセージがたくさん詰まっていました。

特別テーマに寄せられた作文の傾向を一部ご紹介します。

“当たり前”が幸せ

圧倒的に多かった作文のテーマは、コロナ前の日常が「いかに幸せだったか」気づいたというもの。学校行事や修学旅行に加え、人生の節目となる入学式や卒業式、一生懸命練習に打ち込んだ部活動の大会などが中止となり、多くの小中学生が残念な想いを綴っていました。
コロナによって、一生の思い出となる機会がたくさん奪われてしまったことに胸が痛くなりますが、これまで当たり前のように過ごしていた学校や家庭での日常は、「決して当たり前ではない、とても幸せなものだったのだ」と気づいた子がたくさんいました。だから、これまで以上に、家族や身近な人に感謝しながら、一日一日を大切にしよう……と、彼らは前向きに”今“を生きています。
年を重ねた大人のように、達観した子どもたち。早くのびのびとした生活ができるよう願っています。

大人への批判の目

クラスメイトとの楽しい食事の場である給食の時間は「黙食」となり、友達と遊んだり、家族との旅行や外食もできなくなりました。学校や家で、様々な制限を強いられている子どもたちの「息抜きの場」は多くありません。
そんな中、テレビで目にするのは、緊急事態宣言中にも関わらず、路上や居酒屋で遅くまで飲み、ハメを外す大人たちの姿。自分たちは感染しない・させないように、いろいろな我慢をしているのに、なぜ大人はルールを守らないのか、と怒りをぶつけている作文もありました。
また、「コロナ差別」「自粛警察」など、他人を攻撃する人に対しても厳しい意見が。「憎むべきはウイルスであって、人ではない」と、多くの子どもたちが相手を気遣う心の余裕を持つよう訴えています。
本来、子どもたちのお手本であるべき大人。我々の言動・行動は常に子どもたちに見られていることを忘れずにいたいものです。

“人の心”を教えてくれたコロナ

家族や身近な人がコロナに感染したり、濃厚接触者になった体験を書いた作文もいくつかありました。通っていた幼稚園で感染者が出たため、濃厚接触者になった妹に、思わず「近寄らないで!」と言ってしまった小学生は、幼い妹を傷つけた罪悪感でいっぱいになりながらも、自分の心を見つめ、差別は決してしてはいけない、コロナが「人の心」を教えてくれた、と綴りました。
不安や恐怖によって生まれてしまう「差別の芽」。それを摘むことができるのは、唯一「人の心=思いやりの心」だけ。コロナに打ち勝つためには、「人の心」を失ってはならないと多くの子どもたちが気づいてくれたことは、嬉しい限りです。

過去3年間の入賞・入選者はこちら

第48回(令和5年度)入賞・入選者【PDF】
第47回(令和4年度)入賞・入選者【PDF】
第46回(令和3年度)入賞・入選者【PDF】

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