山口県 三丘小学校 6年 鶴本 航平
僕が住んでいる三丘(みつお)は、山口県周南市の田舎のまちです。まわりにはどこまでも田んぼと畑が広がり、緑であふれています。僕は、三丘に昨年の正月に引っ越してきました。引っ越す前に住んでいたのは東京の街中だったので、最初は生活の変化にとまどいました。
三丘に来て最初におどろいたのは、まわりの人たちがとても親切なことでした。僕たちが引っ越す前に、近所の人たちが集まって庭の草刈りや掃除をしてくれました。築百年の古い家は、見学に来たときはボロボロで住めるのか心配でしたが、家の中も、近所のおばあちゃんたちが障子の張りかえをしたり、大掃除をしたりして、引っ越すときはだいぶきれいになっていました。
引っ越してからは、近所の人たちがひんぱんに野菜を持ってきてくれました。お母さんは、三丘に来てから野菜もお米も買わなくて済むと大助かりで、僕もいただいた野菜がおいしいので、野菜をたくさん食べるようになりました。
けれども、お母さんは「いつも親切のもらいっぱなしでなにもお返しができないね。」と言って、心配していました。そして、どこかへ出かけるたびにお土産を買って、野菜をくれる方に持っていっていました。
ところが、お土産を持っていくと、困ったような顔をする人が多くて、持っていったお土産の何倍ものお返しがブーメランのように返ってきます。お母さんは、「どうしよう。」と言って、しばらく困っていました。
ところがしばらくすると、お母さんがお土産を配るのをやめたことに、気がつきました。僕は、もらいっぱなしでよいのかなと、気になっていました。だけど、あいかわらず近所の人たちは親切で、僕にも妹にも、みんな声をかけてくれます。お母さんは何も言わなかったけれど、一年ぐらいたったら僕にも、三丘の親切のしくみがだんだんわかってきました。
三丘では、みんな自分のところで余っているモノを無駄にしないで、喜んでくれる人にあげて「モノを生かす」のです。もらった人は、くれた人に同じ価値のモノを返すのではなくて、また、自分のところで余っているモノを、べつの一番喜んでくれる人のところに持っていったり、モノではなくて、ほかの家の子どものお世話をしたり、庭の草とりをしたり、自分ができることで困っている人を助けてあげます。
小さな親切も、大きな親切も、みんなが自分のできることをお互いにしあっているしくみで、三丘はまわっています。
この方法だと、みんなが役に立てて、みんなが喜んで、とても楽しいしくみだと思います。僕たち子どもも、おばあちゃんたちの集まりに出て楽しませてあげたりと、自分たちのできることをしています。
僕は三丘に引っ越してきて、毎日親切に囲まれている生活ができてよかったと思います。そして僕も、このすてきな三丘の親切なしくみの一員となって、自分のできる親切をしていきたいと思います。