【1時間目】成果ではなく、プロセスを大切に

正解は存在しない!だから図工は楽しい

皆さんは、子ども時代に「図工」の授業をどんな気持ちで過ごしていたでしょう。
他の授業よりも楽しかった、という方が多いと思います。実は僕もそうでした。国語や理科や算数などはあまり良い成績ではありませんでしたが、図工だけは大好きでした。

それはなぜか。

理由のひとつは、絵画や造形には正解が存在しないからです。自由に、自分の好きなように描いていい、作っていい。同じものを描いたとしても、できた絵は人それぞれ皆違います。どれが正解というのはない。算数なら、1+1は確かに2だけれども、絵では空が青でなければいけないというルールはないでしょう。足し算を覚えてから、引き算、みたいなステップも必要なしです。

この「自由に」、というのが子どもの想像力を育てるんですね。それを、技術的な部分から教えようとすると、途端につまらないものになる。

もしも、図工の時間が嫌いだったという方がいたら、それは残念ながら、先生の指導のしかたが間違っていたのでしょう。学校には通知表がありますから、先生は採点しなければなりません。どこかにその基準を設ける必要があるので、熱い“指導”をしてしまうんです。

「構図は?」「色彩は?」「テーマは?」
いやいや。これでは、どんどん制限がかけられてしまって、つまらない絵になってしまう。じゃあ、どうすればいいかをお話します。

成果物より、プロセスが大事!

「自由に」これがその秘訣。
例えば、未就園児のお子さんが塗り絵をしていたとします。ほとんどの子がはみ出して書くはずです。それを見て、親が「もっときちんと塗れば?」なんて言ったらアウト。

技術はどうでもいい。子どもの好きにやらせて、描き終えたら、全力でほめてあげてください。全力で。
ほめることはいくらだってあります。

「きれいなピンクだね」「おもしろい色の組み合わせだね」「すごーい。3つも色をつかったんだ」

ほめられれば、子どもはまた描こうとします。そうだ、お母さま方もいっしょに塗るといい。その時は、上手に塗るというより、あくまで楽しんで描く姿勢で子どもと向き合ってほしいです。
大好きなお母さんが塗り絵に夢中になっている…子どもはよく見ています。きっと絵の好きな子どもに育っていくでしょう。

ほめることは、子どもを育てる最大の栄養です。絵に限らず、子どもが何かをしたら、まずほめる。それで子どもの中に、自己肯定感が芽生えます。自分にはできるんだという自信も生まれます。
親が自分に関心をもってくれているということも大きな安心感と励みにつながるのです。

図工のもうひとつの特長は、成果物よりもプロセスに意味があること。だから、成果物を中心に考えない方がいいのです。作っていく過程で、子どもが考えたこと、行ったことの方が重要なのです。落書きだって、自由に遊んだ痕跡のようなものに過ぎず、結果を求めてのものではありません。楽しんだプロセスが全てで、成果物の出来不出来は関係ありません。問いかけも大事です。

「この子だけ、リボンがないのはどうして?」「二人並んでいるこはだあれ?」「この緑色に塗ったものは何かな?」
そんな風に聞いてみる。深い理由が聞けるかもしれませんし、その子がどんなことに価値をおいているのかがわかると思います。

絵を描いたら、額縁に入れて一番いいところに飾ってあげる。そんなパフォーマンスをしてもいいんじゃないかな。それくらい、子どもの表現物を大切に扱ってあげてほしいのです。子どもの人格を尊重することにもなりますね。