【3時間目】どんどん使わせて、やらせてあげて

道具が使えないと人間力は低下します

「2001年 宇宙の旅」という映画があります。その映画の冒頭で、猿が木の棒を投げる有名なシーンがあります。人類が道具を手にした瞬間を表現しているのです。

人間は道具を使うことで外敵から身を守り、道具を扱うことで運動能力や知能を発達させてきました。でも今、道具を使えない人が増えちゃった。僕が教えている学生たちの中には、カッターナイフを使えない者もいます。怖いと言うんですね。
子どもがハサミを使おうとしても、親御さんが危ないといってさせない、それで使わずに育っちゃった。

僕のところには、雑誌社から子供向け雑誌の付録の相談がくることがあります。そこにプラスチックのハサミをつけようという話もでます。
「危ないからおやめなさい」と僕は答えています。

プラスチックのハサミなんてまともに切れません。切れないハサミほど危ないものはないですよ。子どもは切れなくても無理に切ろうとしますからね。だったら普通のハサミを使わせた方がいい。3歳にもなれば使えます。時には手を切る時もあるでしょう。でも、子どもは身をもってハサミが危ないものだと知ることができるではないですか。

道具を使えない子どもは、将来が心配です。手技、手工は生きていく上で極めて大事だからです。人間力が培われないようなものです。もっと子どもを信用して、道具をどんどん使わせてあげましょう。

限界を超えた先の想像力を引き出そう

さて、僕は子どもの工作の材料として、ペットボトルやそのキャップ、牛乳パックなどを利用します。日常的にあるものを使うのは、前回述べたブリコラージュの考え方です。また、これらは大量に用意できるというメリットもあります。

材料が大量にあっても、少ししか使わない子もいるでしょう。その子のその時点での発想の限界です。
そこで「どんどん使っていいよ。壊したっていいんだよ。あきらめないでやってみよう。こんなにあるからね」
と促してみると、どんどん紙パックを積み上げていきます。

実際には作れなくても、頭の中では自分よりも大きなロボットを想像しています。今の限界を超えた先の想像力、これを表現に引き出せたら最高ですね。

その場合も完成を求めてはいけません。プロセスこそが大事。
買ってきたおもちゃでは、IC、電子回路など複雑で壊れたら終わりです。タブレットやスマホで遊ぶ子もいるそうですが、壊れたらおそらく他には利用できないでしょう。直せないから捨てるしかありません。

でも、工夫する心は、“壊れたら新たな工作の始まり”です。その点、廃物利用の工作は、無限の可能性を秘めていると言えます。活かさない手はありませんね。
自分で作ったものは、壊れても直せるし、作り変えることもできますものね。製作のプロセスを楽しみながら作ったもの、作り変えたものに愛着も湧いてくるでしょう。