【第2回】ほめられることで、子どもは迷わずに学ぶことができる。

1日1回でかまいません。ほめてあげてください。

ある幼稚園で、こんなことがありました。帰りに園に迎えにきた二人のお母さんの話です。
一人は笑顔で、手をあげて「おかえりなさい」と子どもに話しかけました。
もう一人は「ほら、早く帰るわよ。なにしているの、忙しいんだから」と言いました。
働いているお母さんなら、仕事に追われている場合もあります。時には後者のように振舞ってしまうことはあるでしょう。でも、ここは我慢のしどころです。お母さんが忙しいのは子どもの責任ではありませんよね。それなのに、叱られるのでは子どもは困惑してしまいます。

では、どうしたらいいのでしょうか。
実は簡単なのです。「ほめる」だけでいいのです。マイナス点を評価するのではなく、お子さんのプラスの面を見てあげてください。ほめられて嫌な気持ちになる人はいませんよね。それで子どもはもっとほめられたくなります。今はできないことにも挑戦しようとするでしょう。それをお母さんが促してあげればいいのです。
「弟と遊んでくれていたのね。お姉さんになって偉いな。これなら、お片付けも上手にできるかもしれないね。」という感じです。

このお母さんの言葉の中には、どうしてほめるのか、それをどのように評価しているかがきちんと入っているのにお気づきでしょうか。ここをはっきりさせることが、とても重要なのです。つまり「言語化」です。それによって、お母さんの価値基準を子どもに伝えることができます。何をしたら叱られて、何をしたらほめられるかを子どもは学習できます。

また、ほめる時に頭をなでたりすれば、その効果はさらに高まります。言葉だけではなく、肌でも幸せを感じることができるからです。保育士を目指す学生たちにも、「朝、おはようというとき、できるだけ子どもたちにふれるように」と言っています。

これは忙しいお母さまにもできるはずです。子どもの成長は早いので、昨日できなかったことが今日はできている、そんなことはいくらでもありますよね。それに気づいたら、すかさず「言語化」して、ほめてあげましょう。頭を撫でてあげましょう。
それが習慣化してしまえば、お母さんも楽になりますよ。ほめる姿勢でいると、そう簡単に声を荒立てるわけにもいきませんからね。それに、子どもの成長も早まりますので、きっと楽しくもなるでしょう。

前回も書きましたが、今の子は大人との接点が減っています。私が子どもの頃は、近所のおばさんたちに「偉いねえ」と、なぜかほめられたものですが、そんな機会も少なくなっているのだと思います。ほめられるとか、認められるというのは、人間の自己の形成にとって重要なのです。ですから、お母さんがほめてあげてください。
ほめるには、お母さんが子どもをよく見ていないとできません。それが子どもに伝わるだけでも、大きな意味があります。1日1回でかまいません。子どもをほめてあげてください。